ドイツの扉

ドイツの扉

1年間限定のドイツ生活。わからないことだらけだけど、ドイツの扉をたたいてみます。 → 2018年3月末に帰国しました。ちょくちょくドイツには行くので、引き続きドイツのことや日独異文化について書いていきます。

ドイツで『風雲たけし城』が人気な理由

「日本といえば、Takeshi's Castleだよね!」

在独日本人なら一度はドイツ人に言われたことがあるフレーズだと思います。

 

1980年代に人気があったバラエティ番組、『風雲たけし城』は、なんとドイツでは未だに大人気。2017年にもなってまだ再放送があっているというのです。

 

なんでこんなに古い番組が今でもドイツ人に好まれるのかすごく不思議だったのですが、あるドイツ語の単語を学んで以来、その理由がわかりました。

 

その単語とはSchadenfreude シャーデンフロイデ

 

他人の不幸は蜜の味、と日本語で言うように、他人の不幸を喜ぶことを指します。

 

ある意味万国共通の人間の反応だとは思うのですが、ドイツの場合、割とみんなあっけらかんとオープンに他人の不幸を喜びます。

 

例えば、道の反対側で誰かが派手に転んだとします。日本だったら「あらら、大丈夫かしら?」と心配するような状況だと思いますが、ドイツ人は笑います。ドイツ人の夫や友人、ドイツ語の先生にもこのことについて尋ねてみたのですが、「大量に血が出ているなど明らかに深刻な状態でなければ、笑える状況」なのだそう。

 

はじめのころは「ドイツ人って性格悪いな!」と思っていたのですが、シャーデンフロイデを恥じている様子は全くないところをみると、ドイツではごく当たり前の反応なようです。

 

そして『風雲たけし城』はまさにこのシャーデンフロイデのための番組とも言えるのではないでしょうか。

 

 子供の頃リアルタイムで観ていたときの朧げな記憶ではありますが、たけし城は「失敗」をエンターテイメントにする番組だったと思います。一般の参加者が回転する巨大なウーパールーパーを飛び越えたり、大きなお椀型のボートでスライダーを下ったり、ぐらぐらする飛び石をジャンプして川を渡ったりするなかで、失敗して転んだり池に落ちたりするのがハイライト。

 

あくまでもテレビという一応「安全な」場での失敗なので、参加者が大怪我をすることはなく(裏では事故もあっていたのかもしれませんが)、笑っていい状況なのか笑うには深刻すぎる状況なのか迷う心配もありません。『風雲たけし城』は、ドイツ人が心置き無く他人の不幸を楽しめる番組ということで人気なのだと思います。