ドイツではなぜ吹き替えが主流なのか
ドイツの映画もドラマもいまいちパッとしないと思うのは私だけではないはず。もちろんドイツ映画には「名作」と呼ばれるものや、何年かに一度世界的にヒットするものもありますが、ハリウッド映画のように毎年何本も世界中の映画館で上映されるということはなさそう。ドイツ国内においても、映画館の多くは主にハリウッド映画の吹き替え版を上映しているようです。
ドラマに関しても似たような状況で、私の周りの人にドイツのドラマのお勧めがないかと聞いても、ドイツのドラマは面白くないから海外ドラマしか観ないという人が大多数。実際ドイツのテレビでも、アメリカのドラマを吹き替えで流していることが多いのです。
映画にしてもドラマにしても、ドイツではなんで吹き替え版が多いのかずっと謎でした。
私としては断然字幕派だし、ドイツ語初心者にドイツ語吹き替え版は辛い!と思っていたのですが、最近気付いたのです。
ドイツ語って字幕向きじゃないなと。
テレビも映画も字幕には字数制限があるのに対し、ドイツ語の単語にはべらぼうに長いものがあります。多少語数を調整したところで、きっと字幕の字数制限にひっかかると思うのです。
最近調べたドイツ語の単語で「ながっ!」とつい声が出てしまったのがこちら↓
Geschwindigkeitsüberschreitung
スピード違反という意味です。日本語なら6文字、英語ならSpeedingと8文字で済むところ、なんと30文字。もうこれだけで字幕の字数制限が埋まりそう。
ちなみに、諸説あるようですが、ドイツ語で最長と言われている単語がこちら↓
Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft
英語:
Association for subordinate officials of the head office management of the Danube steamboat electrical services.
日本語:
ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合
なんと79文字!これは英語訳も十分ながいですが、日本語だと22文字です。半角英数字と全角ということを考慮に入れたとしても、日本語の方が圧倒的に短くなります。まぁ、この単語が出てくる映画はそうそうないでしょうけれど。
漢字も密度が濃いので字幕向きではなく、字幕用の特別フォントがあるとどこかで聞いたことがありますが、長くなりがちなドイツ語はきっと字幕翻訳家泣かせなはず。
ドイツでは吹き替えが主流なのは、ドイツ人がことさら吹き替えを好んでいるというわけではなく、名詞をつなげて一つの単語にするというドイツ語の法則上、吹き替えにせざるを得ないからなのかもしれません。